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会員通信「東日本大震災の被災地・岩手から」vol.2(小林高範会員)

岩手県山田町に赴任して2月以上が過ぎました。今年は岩手県沿岸部では低温状態が続き、連休明けから6月に入ってからも日中の気温が15~20度と肌寒い日が多くありました。特に発掘現場は浜風が強く吹き込んでくる立地にあり、富山での生活感覚だとまだ4月上旬位の体感で、冬用の防寒着を着込むこともしばしばあります。

4月半ばから開始した畠中遺跡(縄文後~晩期、古代)の発掘調査もかなり進みました。表土や包含層に遺物が多量にみられることから全て人力による手掘り作業を行っていますが、地表から1mほど下がり、遺跡の全体像が見えてきたところです。調査地北側は谷部を利用した土器捨て場(縄文後期)が形成され、縄文土器、石器、土偶等が良好に出土しています。少し変わったものとして、浅鉢の先端に人の顔を表した装飾付き土器がみられます。調査区南側は縄文晩期の遺物包含層や土坑、古代の集石や木炭焼成遺構等が見つかっています。集石は初め縄文時代に属するものと考えていましたが、礫を除いた下に木炭焼成遺構や鉄滓、炉壁が見つかり、後に形成されたものとみられます。

調査当初は土や地山の状態が富山と異なり、手探り気味でしたが、近頃ようやく土の微妙な違いが分かってきたところです。なお、5月末にテレビ放映があり、町内で県埋蔵文化財センターが実施している大規模調査(田の浜館跡 50,000㎡)を含め、復興事業と埋蔵文化財調査の両立に強い関心が寄せられていることを日々感じています。

(小林高範)
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プロフィール

富山考古学会

Author:富山考古学会
1949年に設立。会の目的は、おもに富山県の考古学調査と研究、考古資料をはじめとする文化財の保存と継承、そして新人の指導。学会誌『大境』と連絡紙を発行。シンポジウムなどの研究活動、遺跡整備事業などに貢献。2008年、文部科学大臣表彰を受章。2011年、日本学術会議協力学術研究団体に指定。
※写真は氷見市大境洞窟(国史跡) [氷見市立博物館蔵]

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