佐伯哲也著『能登中世城郭図面集』が刊行されました

 本会会員の佐伯哲也氏の新刊である。
 「越中中世城郭図面集」三部作を刊行した著者が、いよいよ越中を飛び出して他国の中世城郭をまとめる仕事に入られた。本書はその成果の第1弾である。

 能登の119城館の縄張図と解説、七尾城支城群についての特別論文を収録、さらに位置図と一覧表がついて利用者の便が図られている。

 縄張図の提示とそこから読み取れることに主題にしつつ、文献史学・考古学の成果もふんだんに盛り込まれる。能登中の図書館をまわって文献史料を探索したほか、考古学分野は報告書だけでなく、自治体の担当者に会って生きた情報を入手したとのこと。その成果が本書をより豊かなものにしている。

 もちろん既往の研究成果をつなぎ合わせただけの解説ではなく、ときに大胆な仮説を提示したり、先行研究と異なる見方を示したりしながら読み応えのある内容となっている。見過ごしてしまいそうな遺構もおざなりにせず、根拠を示して積極的に評価しようとされているのは、膨大な調査に裏打ちされた確固たる中世城郭像を描ける著者だからこそ可能な仕事だと思う。


 これまでの4冊の著書で掲載された縄張図は計337。ただ一つの例外なく自分で描いた縄張図を用い論述されている。写真で代用したり、文章だけの説明で終わらせないところに著者の強い信念を感じずにいられない(もちろんだからこそタイトルに「図面集」とあるのだと思うが)。自分で見て、測って、描いてはじめてその城が理解できる、縄張図を描いていない城については自分は語る資格がないということではないか。

 著者の情熱の結晶ともいうべき本書を、ぜひ多くの方が手に取られるようおすすめしたい。
 中世城郭の見どころや奥深さがわかる格好の書である。考古学関係者や研究者にとっては今後否が応でも触れざるを得ない基本文献になることと思 う。

 次は加賀編に向けて意欲を示されている。著者の仕事がどこまで広がりをみせるか、とても楽しみである。

 (野垣好史)

 201581日発行 A4判 274頁 税込4320円 桂書房)

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プロフィール

富山考古学会

Author:富山考古学会
1949年に設立。会の目的は、おもに富山県の考古学調査と研究、考古資料をはじめとする文化財の保存と継承、そして新人の指導。学会誌『大境』と連絡紙を発行。シンポジウムなどの研究活動、遺跡整備事業などに貢献。2008年、文部科学大臣表彰を受章。2011年、日本学術会議協力学術研究団体に指定。
※写真は氷見市大境洞窟(国史跡) [氷見市立博物館蔵]

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